〜冒険紀行〜(番外編)

〜主な出来事〜
     
5月7日 引越し日記 〜苦悩編〜 ←リヤルローバー引越し
5月9日 引越し日記 〜懺悔編〜  
5月13日 引越し日記 〜復活編〜  
5月16日 サイト開設1周年記念 ←秘書の手による。
     
     

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5月7日


イヤハヤお待たせです。
「もう誰も待ってなかった」などと言わずにおいてください・・・。

さて、いいトシこいた男が、しかも引越しは始めてではないというのに、かような長き期間皆様をお待たせするということは、たしかに有り得べからざる事態でありました。

一体何が、彼――信仰深きウィンダス国民であり、名誉あるアーティファクトをいなせに着こなすタルナイト・ローバーの中の人に起こったのでありましょうか?
その謎に包まれた1ヶ月間の真実をここで皆様にお伝えするのが僕の使命であると信じ、筆を起こしたものであります。



リヤル引越し日記 〜苦悩編〜



この文明社会において、書類の記載ミスなどは許されることではない。

「数字が合わない」というのは事務の人間が経験する悪夢のひとつで、あっちを呼びつけこっちに聞き出し、何度も何度も同じ数字を相手に計算機で戦うはめになる。
ようやく事件が解決すると、犯人には「あんな簡単なことができないなんて」という呪詛と共に軽蔑の眼差しが向けられる。
従ってそのようなミスは小さなこととはいえ、決してしてはならないし、厚かましい言い訳などもってのほかなのである。

去る4月2日、僕は引越しをした。
数日前から簡単に荷造りをして、住んでる人間がたったひとりだというのに無駄に大量にあったコップを捨てた。(20個ちかくあった!)
本という本をダンボールに詰め込むと、14箱になった。
中をちらりと覗いてみれば、よくこんなくだらない本を買ったなぁというものも結構あった。これは引越し先で整理し直す予定である。

幸いなことに我が家にはあまり家具は多くなく、数人の友人の手伝いもあって、輸送作業は一晩で片がついた。
汗と埃にまみれながら頑張った結果、みごとに部屋はからっぽになった。
長くお世話になった我が部屋ともおさらばとなり、最後にパソコンを慎重に運び出した。

このパソコンには本当に世話になっている。
もはやこれがなければ生活できないと断言していい。
いや、まあ、死ぬことはないだろうが、僕の余暇の精神活動のほとんどがこの箱の中の世界で行われているのだ。

引越し作業にも大活躍し、携帯電話やクレジットカードなどの住所変更もパソコンで済ませた。
一番大事なプロバイダのサイトでも、当然必要な手続きをした。
僕の加入しているタイプの契約では、一旦解約をして、再度申し込みしなおすという形だった。
フンフンと鼻歌を歌いつつ住所や電話番号などを入力すると、「1週間から10日で新居に回線が通ります」とのことだった。
そんなわけでローバー@チームZのトップに「1、2週間で戻ります」と書いておいたのである。



そして10日が経過した。
プロバイダから待ちに待った書類が届いていたので勢いよく破って中身を確かめる。
「このたびは、**サービスにお申し込みを頂き、まことにありがとうございます」
よしよしこれだ。ウキウキして布団に倒れ込みながらパソコンの電源を入れ、飲み物を取りだし、膝の上に掛け物をかけた。

しかし挨拶文に続く1行に目が移った瞬間、僕は手に取りかけていたマイルド・カフェオ〜レをテーブルに取りこぼした。
高校の体力測定試験の時以来という勢いで飛びあがったため、膝の掛け物がパソコンのモニタの上にかぶさって画面を隠した。
僕がジャイアント馬場だったら、今の跳躍で天井に頭を叩きつけて気絶しているところだ。
いや、むしろ気絶して正解かもしれなかった。
そこにはこう書かれていた。

「・・・まことにありがとうございます。お客様のお申し込み内容に基づき(うんぬん)
 適合調査を申請いたしましたところ(ごにょごにょ)
 登録上の情報とお申し込み内容との間に相違(不備)があるため、お客様の申請は受理されませんでした。
 つきましては、本状と同封の・・・」

あッ、電話番号書き間違えてたーーー!!!


いやほら、いつもは携帯で電話してるし、こんな番号なんて取得していらい見たことも聞いたこともございませんでして・・・。
ああそうです。僕が悪いんです。やってしまいました。布団の上で土下座します。

あくる日の朝一番にサポートセンターに電話をかけて、正しい電話番号を伝えた。
「1週間から10日で新居に回線が通ります」という返答は、どこかで聞いたと思ったら引越し前日に聞いたのと同じである。
じっと我慢の子。



5日後に我慢できなくなり、ためしにモデムを繋いでみようと思った。
ひょっとしたらもう通ってるかも・・・モデムのADSLランプを見つめる。このランプが「点灯」すれば、開通したという証拠だ。
もし開通していなければ、「点滅」するのだと説明書に書いてある。
書類はまだだけれども、たったいまどこぞの大きなビルの中で回線付け替え作業が終わった瞬間かもしれないではないか。

電源オン。
果たしてそのランプは、エレベーターから落ちてしまったスペランカーの主人公のようにピカピカと点滅していた。
2chの有名なNameOverさんによれば、彼が点滅するのは、

 78 名前:NAME OVER[] 投稿日:02/05/31 14:39
 >>77
 彼は死を悟り、恐るべき高さ(約80cm〜)から地面に叩きつけられる恐怖と激痛を緩和するため、
 激突前に精神と肉体を分離しているのです。
 あれはその昇天している姿なのです。
 勿論その間、生まれた時から虚弱体質で、余命3ヶ月と宣告され、
 長い入院生活に嫌気が差して病院を抜け出し、
 無茶を承知で長年の夢だった洞窟探検に飛び出すまでのことを走馬灯のように思い出しています。
 勿論この後、恐るべき高さ(約80cm〜)から地面に叩きつけられた彼の肉体は木っ端微塵に砕け散っています。

とのことだが、これは極めて真実に近いのではないかと思う。
そしてスペランカーの主人公は僕の回線が通ってないことと何の関連もないというのも妥当な意見である。
要するに我慢できなくなっているのである。
僕はモデムが木っ端微塵に砕け散ってしまわないようにそっと両手で支えてやり、PCのエミュでスペランカーを起動し、エレベーターから落下するたびに涙を流した。



6日目の夜には、「もうさすがに通ってるんじゃないのか」という気分になりモデムの電源を入れた。
1週間から10日ですと言われているのに聞き分けの無い子である。

相変わらずピカピカと落ちつき無く点滅するADSLランプを疎ましげに横目で見る。
その時、ある素晴らしいアイデアが頭に浮かんだ。
これはしばらく点滅して、そのあと点灯に変わるものなんじゃないのか。
点滅している間はデータをやりとりしているのかもしれないぞ。

そう思い、モデムをそのままに部屋を後にすると本屋に向かった。
しばらく立ち読みなどして我が働き者のモデムくんのために時間をつぶして、部屋に帰った。
これだけ時間を与えてやったのだから、きっとデータのやりとりも終了し、僕のために明るい緑色のランプを点灯させて待っていてくれるだろう・・・。

帰宅後、ふて寝した。



7日目には、少し頭もスッキリしてきた。

よく考えてみれば昨日は日曜であり、回線配給業者は自宅で惰眠を貪っていたのだろう。
それに対して今日は月曜。きゃつらも子の親なら、そろそろ仕事をするはずだ。
元来日本人というのは勤勉を尊び、義に生きる民族。
1週間から10日と言ったならば、必ずや7日目には約束を果たすだろうことは、天照大神に誓って間違いないのである・・・。


 幸なくて、幸ありし日をしのぶより なお大いなる苦患なし
             ――ダンテ「神曲」 地獄遍第5曲――


ああ、懐かしきかな、幸せの日々よ!
過ぎ去りし、思い出のネット世界よ!

僕は君を忘れないだろう。
店頭でパソコンを見かけるたびに君を連想し、ためしにクリックしてみたりもするだろう。
しかしそこにあるものは何だ?
――虚無だ!
よろず一切を憎み、全世界を破壊せんとする悪の意思そのもの――ひとたび打倒されたかに見えても、人の心に悪の息吹が根付く限りヤツは再び、いつか、必ずや復活を果たすであろう!

否、それは虚無というよりFFシリーズでよく会う大ボスである。

――ああ、FF!
そうだ、以前そんなオンラインゲームがあった。
僕はあれに出会わなければよかったのだ、こんな苦しみを味わうならば!

僕は頭をかきむしった――月に向かって叫んだ――○○○した――読者は好きな言葉を○○○の中に挿入して想像してよい――そういった風に苦しんだ。


苦悩のうちに数日が過ぎ去り、「1週間から10日」の約束はかくも無残に破られた。
僕は心を決め、戦いを開始した!

「はい、こちら**社サポートセンターの△△です。」
「工事は! 工事はもう終わっているはずなのに!」
「いまモデムのランプはどのような状態になっていますか?」
「おお、星の神子さま、加護を! 点滅したままなんです!!」
「なんの加護ですって?」
「あの、やはり、・・・虚無のしわざでしょうか?」
「お手数ですがテクニカルサポートのほうにお電話なさってみてください。」

プルルル・・・カチャッ。

「はい、こちら**社テクニカルサポートの××です。」
「呪われし暗黒の!」
「ええと、調べてみましたが、たしかに局内工事は終了しているようですね。」
「やはりッ!!」
「お心当たりでも?」
「いいですか、人の心の中には悪の息吹が」
「追ってこちらからご連絡差し上げます。それでは失礼致します。」


このように、僕の熱意によってものごとは順調に進んだ。
要は、回線の質を調整する工事をするからモデムをつけっぱなしにして待っていてくれという話だった。

よかった。これで一応のメドがついた。
虚無のせいではなかった。
当たり前である。



それからさらに数日後。
約束通り、回線配給業者から連絡が入った。

その電話で僕は、ある恐るべき真実を悟るに至るのだが、長くなるので一旦区切ろうと思う。
読者は明日まで首を長くして待ってよい。
といっても、1ヶ月以上も放置された辺鄙なサイトに訪れてくださる奇特な方が、1名でもいらっしゃればの話だが――。



5月9日


リヤル引越し日記 〜懺悔編〜



どんよりと曇りきった、もの憂く暗いその日、暗雲の低くたれこめたる空の向こうより、僕の携帯が失望の電波を受信した。
引越しの当日から数えて20と幾度目かの正午あたりだった。

僕は電波の送り主――もちろん前回の最後に述べた通り回線配給業者であるが、その若い男の、ハキハキとした明るい声が告げる、重苦しい内容のひとつひとつに、細る喉から振り絞った小さな声で相槌ちを打っていた。


まず、「回線の質を調整する工事」は、問題なく行われたらしい。
その結果、僕の回線には何らの異常もなかったという。
そして、「まだ、繋がりませんよね?」 と確認された。

・・・ぁぃ。(←細い声)

そう答えると、その返事があらかじめ予想済みだった事を裏付けるように、スラスラと次の質問が読み上げられた。
いわく、モデムのまわりにノイズになるような電化製品がないか、ガスのメーターに使用量を量る探知機がついていないか、インターホンの回線が電話線の近くにないか。

・・・ぃぃぇ。
ありません・・・それどころか、うちにはインターホンなんて上等なものはついてませんし、電池式の、ピンポ〜ンて鳴るだけのショボいやつで、しかも電池が切れているから鳴りません。

ここで相手がひと呼吸置いた。
いよいよ、この電話をかけてきた真の目的である、なにか危険な事実を知らせるつもりなのだ。
これまでの質問など、単なる確認事項、よくある「使用上の注意」のような、誰も顧みない、形式上言わなくてはならない飾りものにすぎないのだ。

「そうですか、となると・・・。」

僕は分かっていた、この問題のただならぬことを。
頭上の低い雲に押しつぶされるようにうつむきながら、僕は恐ろしい宣告を待った。
いまにも雨が降り出しそうだった。

「一度、電話が繋がるかどうか、確認してみてもらえませんか?」
「エ? 電話、ですか?」

僕は不意をつかれて、おもわず素っ頓狂な声をあげた。

「はい。電話機はお持ちですか?」
「いえ、持ってませんが。誰かから借りて・・・」

(アッ・・・・・・!)

「受話器から発信音が聞こえるかどうかを、一度お試しください」
「帰ったら、すぐに、必ず・・・」

(そ・・・そうか・・・バカな・・・僕はなんて・・・)

ゴロゴロ・・・ガガーン! ピシャッ!
ついに稲妻が落ちた。
頭上の雲からではない、僕の、脳から心の中に、だ。

いまこそ僕は事の真実を悟った!
なんていうバカ野郎なんだ、僕は! そしてこれで、ようやく、回線復帰のメドが立ったぞ!
携帯を切り、雲の切れ間からほのかに見える日の光に向かって僕は叫んだ。
「ユーレカ (我悟れり)!」

そして、ガックリと肩を落とした。



ところで、いきなりだが、ここにレベル上げのパーティがあったとする。
あなたはそれに参加したのだが、現地に着いてみると、サポを間違えていたと気付く。
さて、あなたならどうするだろうか。

「あーーーーーーーーっっっしまったぁぁあぁあぁーー!!」
などとおもむろに叫び、みんなが「どうしたどうした」と言ってきてはじめて、
「すいませんサポ変えるの忘れてました」
と懺悔するのではないだろうか!?
言い訳などもタップリと用意して!?

いまの僕はちょうどそんな気持ちである。

プロバイダに引越し手続きをした日から20数日後になって判明した、その恐るべき真実とは何であるか。
少なくとも、読者の予想のはるか斜め下を行っているだろうことは保証する。
なにしろ・・・え、もういいですか?
じゃあ言います。

「あーーーっっっしまった!! NTTの引越し手続きをしてなかったぁぁあぁあぁーー!!」


ふむ、これぞまさに「無理wwwサポシwwww」状態と言えよう。
海串さえ食べていればサポシだろうが挑発が使用可能になると思っていたようなもんである。
電話が引かれてないのにADSLを頼んでいたということである。
アハハー(・▽・)



チョット待ってくれ、セニョール、その振り上げた拳を引っ込めてくれ。言い訳をさせてくれないか。

「何回電話したと思ってるんだ、誰か一人くらい気付け、サポセン住人どもッ!!
 NTTのエの字も出さなかっただろッ!!」
・・・え、お前が気付けよ、ですか。

いやっ、だいたい、不親切すぎるのだ!
改めて僕は高らかに宣言する、あくまで責任を押し付けることを!

プロバイダの公式サイトに「引越し窓口」が無いなど信じられるだろうか。
さらに、そのことへのお詫びと共に書いてある説明だって有り得ない不親切さ!
「お手数ですが一度ご解約なさって、新規にお申し込みください」
これだけかよッ!!

IDやパスワードは変わらないハズなんだが・・・新規にしちゃったら変わっちゃうんじゃないの?
と首をかしげながらも「解約手続き」ページへのリンクが貼ってあるから飛ぶでしょ。
解約しちゃうじゃん。ここまではいいでしょ。首は傾きっぱなしだけど。

で、次の画面では「お引越し先の住所と電話番号をご記入ください」
なのか?! なんかヘンだろ!!
そして「ありがとうございました。1週間から10日で新居に回線が〜」
なのかァッ?!

これで終わったと勘違いしちゃったじゃないかよーーー!!!


「まず始めに、NTTに引越し手続きを行ってください」と書かんかァッ!
「当社はNTTと連絡を取り合ったりは全く致しません」とも書いておけェッ!!
ネット目的でのみ電話回線を開いた僕のような人種にとって、NTTの存在は小さすぎて気付きにくい。
小さかったんだ、Sサイズのタルタルよりもなァッ!!

ああ、今なら分かる。
なぜ彼ら――地獄から来た血と戦慄のサポセン住人たち――が毎回、
「どうも状況がよくつかめません」
などとのたまってらっしゃったのか。

彼らにとって、自宅に電話回線を持ってないダメダメ愚民が存在するということは、想定外だったのだ。
客の家に電話が通っているということは、あまりにも当たり前の大前提だったのだ。
え、そんなの誰にとっても当たり前だって。
そ、そうですか・・・。



50行ちかくにわたって言い訳をすると少しは気も晴れたので、僕は翌日、さっそくNTTに出向いた。

ここで僕は、NTTの存在の大きさを認識させられた。
まず建物がデカイ。
入り口に3段か4段の階段がついているほどデカイ。

自動ドアをくぐると、受け付けの女性がササッと近寄ってきた。
「本日はどういったご用件でしょう?」
「あ、引越しなんだクポ〜」
「ではお呼び致しますので、こちらにお座りになってお待ちください」
と言われて座ってみたソファーがまたデカイ。

しばらくくつろいでいると先ほどの女性にお呼ばれしたのでついていく。
またしても椅子を差し出されたので座る。肘掛け付きだ。
机の向こうには、研修中らしいあばた顔の若者と、そのうしろにいかにもベテランらしい女性が待っていた。

僕は若造の頭ごしに、その女性に話しかけた。

「引越ししたんです。電話番号はABC-DEFGです」
「失礼ですがお名前は」
「ローバーです」
(カタカタ・・・女性がキーボードを叩き、ひとつ頷く。)
「ローバーさまのご住所を確認します」

果たせるかな、僕の登録住所は旧住所のままだった。
いまでも元の部屋に押しかけて、電話口を借りれば、通話が可能な状態だという。



僕は状況を伝えた。
NTTより先にプロバイダにだけ引越しの連絡をしてしまったこと。
もう3週間も前に引越しは終わっていること。
そして恥かしさを隠すために、アハハ(・▽・)と笑ってみせた。

女性は、研修中らしい若造に2、3書類の書き方の指示を出した。
ピシっと締まったネクタイがまだ似合わない新人さんは、メガネのずれをグイと直し、消しゴムをつかんで自分の間違った個所を消した。
しかし正しい書き方が分からないらしく、シャーペンを手に取ったままの格好で凝固してしまった。

「そうですね、プロバイダさんは」
ベテラン女性は、新人さんの手元から書類を拾い上げた。
「ローバーさんの電話番号が、実際にどの住所に繋げてあるのかを確認することは出来ませんから、」
書類はすぐに机に置き直され、女性がトントンと指で叩いた個所に、新人さんが○印をつけた。
「そういった間違いも起こるのかも知れませんね」

そう、プロバイダでは、僕に代わってNTTに電話回線移転の申し込みをしてはくれないのだ。
そこは自分でやらなくてはならなかったのだ。
所詮新興のプロバイダ業者に対して、NTTはあまりに偉大なのだ。

「ではお引越しの手続きを行います。・・・わかる?」
女性は新人さんに言ったのだが、おもわず僕が
「わかります! いえ、やっとわかりました」
と言いそうになった。



しかし、安堵のため息を漏らしたのもつかの間、さらなる衝撃の事実が知らされたのである。
新しい部屋に電話回線を通す室内工事が必要であり、その最短の工事日は、なんと!
5月7日であるという。

な・なんだってー?!

「あ、あの。ええと、ソレって2週間以上先ですよね? もう少し早めには・・・」

・・・ならないのだという!
おお、ゴールデンウィークなど呪われろ。

かくして僕の復帰予定日は決まった。
5月7日だ。
あとは、親切なNTTのベテラン女性職員さんが付け加えてくれた通り、プロバイダにこの日付を伝えるだけだ。
とんでもない失態で1ヶ月も不在にしてしまったが、やっと復帰できるのだ。

ああ、FFのバージョンアップも気になる。何が変わったのだろう。
はやく5月7日にならないものか。
PS2も買い換えたし、パッチ当てるのに1日かかるだろうなあ。
何にしても、はっきり予定日が分かってよかった。



しかし、この最後の段階に来て、僕はまたもや新たな間違いを犯してしまうのである――。



5月13日


リヤル引越し日記 〜復活編〜



2000年4月20日にPS1で発売された「ウィザードリィ・ディンギル」は、「ウィザードリィ」が「BUSIN」に墜ちていく前の、ウィズがウィズであった最後の作品である。
ウィズの魅力が、果てのないレベル上げと、未知のアイテムを求めてのひたすらな潜伏であることは、万人が認めるところだろう。

僕は中古でこのゲームを買い求め、ファミコン版「ウィザードリィ2・リルガミンの遺産」で味わって以来忘れていた、あの楽しさを再発見した。
そこにはウィズのすべてが――テンポの良い戦闘、レベルが3ケタになってさえ危険を伴う探索、帰還後のアイテム鑑定での喜びと失望など――があり、懐かしい顔をして僕を迎えてくれた。

日夜同じ洞窟に潜り、スーパー忍者・ローバーのレベルが50を越え、ドラゴン族・オプティのブレスを耐えきる敵が現れはじめてようやく、少しく倦怠を感じた。
そこで僕は次なるゲームを買った、それが「WRC2」である。もちろん中古だ。

WRCというのは「世界ラリー選手権」の略で、ようするにレースゲームだ。
(それなら略は”SRS”じゃないの? とかつぶやいている大和魂丸出しの読者は、北米パーティに入って勉強してくるように。)

このゲームがレースゲームの最高峰であることもまた、疑問の余地はあるまい。
なんといっても公道を走るのだ。
急勾配にジャリ道、連続ヘアピンの峠(眺めもいい)、とても覚えきれないほどのコースの長さ。

精密極まるコース取りでコンマ1秒を競うサーキットレースとは違った味わいがある。
ボンボン跳ねる車(道がデコボコなのだ)をいかに制御し、コースごとに異なる路面状態をいかに読みきるか。
僕はこのゲームにも深くハマり込み、おかげでネットから断絶されているという事実を忘れることができた。

しかし、忘れている場合ではなかったのである。




前回の最後に言った、僕の最後の間違いは、暇つぶしに買ったこの2つのゲームがあれほど面白くなければ、起こらなかったかもしれなかった。

それに加えて、ようやくわけの分からぬ混迷から抜け出し、来たる5月7日には電話回線が開通することが決まった安堵感が、僕をしてオフゲーに沈溺させ、一番肝心な事を忘却せしめたのである。

僕は結局、プロバイダに「5月7日」というXデーの日付を伝えないまま、ゴールデンウィークを迎えてしまったのである!

この怠慢には3つの理由がある。
そのうちの2つは上に既に述べた。
3つめの、そして唯一僕の責任ではない(ここがたいへん重要だと、僕は考える)理由は、

電話が繋がらないんじゃ、サポセンに。

とにかく何度かけても話し中。しまいには「現在大変混雑しております。時間を置いてまた・・・」などとアナウンスが流れるのだ!!
この「引越し日記」の1日目に、いとも簡単にサポセンと通話しているかのように書いたが、あれだって相当な回数リダイヤルしたのである。実は2日がかりだったのである。

そんなわけで、僕がようやくプロバイダの人と話ができたのは、Xデーを翌日に控えた5月6日だった。
(サポセンは平日の9時〜17時営業であり、当然ゴールデンウィーク中は休業なのだ)



「もしもし、実は今回引越したんですがウンヌン」
「お話がよくつかめません。」
「ようするに明日電話が来ます。ADSLの工事をしてください」
「手元のデータでは、工事済みとなっております。」
「だーかーらー、電話を移転する前に工事してしまったんです、お願いだからもう一回工事してください」
「上の者に問い合わせますのでお待ち下さい。」

結局最後まで、誰も僕の事情を理解できる人は現れなかった・・・。
いや理解はしてくれるんだけど、そんな状況の時どうするのかっていう手引きが存在しないみたいなのだ。

NTT電話移転工事の前にADSL工事を依頼してしまった

というマヌーな人物は、この広い日本で僕ひとりだけだったのだろうか。
我ながら実に情けない。

「もしもしお待たせ致しました。」
「はいはい」
「恐らく、電話が開通する明日になれば、ADSLもすぐに使えるのではないでしょうか。」
そんなパママ。何故です。ADSLの工事は確かにしましたが、旧住所に工事してしまってたんです。
 もうすぐ誰もいなくなることが分かってる部屋に、改めてADSLを引いてしまったんです。ばかな話ですが。
 その後に電話を移転したんですから、新住所への電話回線にはADSLは乗ってないはずです」
「本当にすみません、また、しばらくお待ち頂けますか。」



ここが踏ん張りドコロである。
こっちだって自分の恥かしい間違いを何度も説明しているのだから、なんとしてもこの場で処理していただきたい。

「もしもし。」
「はいはい!」
「ええと、一旦ご解約なさって、再度お申し込みを頂くという形になるそうです。」

またか。またその手続きか。ていうか1度目は本当に上司に聞いたのか。
でもこれで、やっとスタート地点に戻ったわけだ。
1週間から10日で新居に・・・に、ひと月ぶりに戻ってこれたってわけだ。バンザイ!! ウワァン。

「・・・や、やっぱりそうですか。じゃあ、この場でお願いします」
「イイエ。」
「?!」
「そのお手続きはオンライン上でのみの受け付けとなっております。」

んじゃあゴールデンウィーク前に電話が通じてたとしても状況は変わらなかったんですね!
そうですかそうですかありがとうございました!
たいへん結構なお手前で!
ガチャン!!

僕は怒ってはいなかった。
ていうか怒れる筋合いありません・・・すいませんアホゥで・・・。



さて来ました! ヤッター5月7日!!
ローバー@ダイヤルアップ復活である!!

僕はADSLが使えないことを確認し、すぐさまプロバイダのページに飛んだ。
うへっ、とんでもない遅さだ!
いまどき56kとか有り得ない! はやくADSLを引いてくれ! と思いながら。

そして飛んだ先のページで、プロバイダ様から、最後の、強烈なパンチを見舞われた!

なんと・・・
すんごい分かりやすく書きかえられていたのであるッ!!!


えーー!
僕が処理したときは、あんなに見づらくて、なんの説明も無くて・・・。
ああッ、「必ず事前にNTTへ連絡しておいてください」とか但し書きが増えてるッ!!
(これって僕のおかげ?)

お引越しの流れ〜お客様にして頂くこと及びプロバイダ側で処理すること〜
とかなんとか、お引越しの際にメチャ嬉しい、一目で理解できるフローチャートが載ってるッ!!
「このタイミングでこれこれしてください」
とか書いてあるッ!!

貴様等ゴールデンウィーク中、客の電話も取らんと、こんな見やすくて嬉しくてお客様に優しい表などを作っておったのかァッ!!
これ見て分かんなかった奴、アホゥじゃんか。
・・・ひでえよ! 泣くぞ!

ティッシュで涙を拭きながら、とてもとても分かりやすい表に従って解約手続きを済ませる。
親切な新しい表によれば、僕は数日待って、解約完了のメールが来てから、再度申し込みすればいいらしい。
おやおや、登録上では、本当だ、新住所にADSL設置済み、とかなってるよ。
笑っちゃうよね。アハハ(・▽・)



僕は新鮮な気持ちで、ひと月ぶりのネットの世界を楽しんだ。
お気に入りのFF日記サイトを巡り、したらばにカキコなどした。
スクエニのサイトにも行き、4月22日分のバージョンアップ情報を見て心が踊った。(この時まで内容を知らなかった)

君はおかしい、最近の若者はバーチャルの世界に生きている、とか言われても構わない。
僕は久しぶりのネットサ〜フィンで、生き返った気がした。
コレがなければ、人生灰色だ。
コレと、あとスカパーで見る海外サッカーと、あとゲームと、あとロック音楽のCDがなければ灰色だ。
誰が、コレよりも、職場の同僚と焼き鳥屋で千鳥足になるほうが健全だなどと言えるだろう?

「日記の続きを書け」と急かされる幸せ(そう、幸せ)も思い出した。
僕はこの小さな内輪向けのサイトを維持することが好きなのだ。でなければ続かない。

さてそんな幸せな気持ちのうちに、解約完了のメールが届いた。
呪わしい鎖のような、旧住所へのADSL回線は撤去されたのだ。
僕は解き放たれて、憧れの40M(ああ、本当に56kは遅い)の申し込みをした。

住所、名前(一応断っておくが、本名はローバーではない)、電話番号を記入。
「申し込み」ボタンを、ポチっとな!
よっしゃあー完了!!


――お申し込みは受理できません。すでにADSLを利用中です――



フォルツァ凸(゚Д゚#)!!



――完――



5月16日


まったくもう、そんなにこだわったって意味ないですわ。
もうこれでよろしくて?
ローバー! 始めの1行に何時間かけるおつもり?
いつも面倒な仕事をぜんぶ秘書の私に押し付けてるから、ついにボケたのですわね。

ホラホラそんなふうに短い腕をグルグル回したって無駄ですわ。
その半分の勢いでいいから頭のほうの回転を上げて欲しいですわ!

「サイトを作ってから1年がたちました。ぼくがんばったです」

名文ですわね、そうじゃなくて?
エ、みんなのおかげですって。フーン、本当にそう感じてるのか私には疑問ですわ。
だって1周年記念日は、もう1ヶ月も前に過ぎてるんでしょうに。
それを放置に放置を重ねて・・・事情なんか知らないですわ。プイ。

とにかく、少なくとも私にだけは感謝するべきですわ。
いったいこの1年で、いくつのクリスタルを売りさばいたか・・・秘書ってたいへんですのよ!
それに、いつ黒25になるおつもり?
アスピルがずーーーーーーーーっと倉庫の邪魔ですわ。使わないなら捨ててよろしくて?

関係なくないですわ。
倉庫がスッキリ片付かないから名文も浮かばないのですわ。
いいえ、ローバーに任せてたらいつまでたっても完成なんかしないのは分かりきってますわ。
私が書くから、横から見て、ウンとかスンとか言ったらいいでしょう。
それで、このアスピルは捨ててしまいますわよ?

ああ、もう、モーグリのうしろに隠れるのはやめなさいと何度言ったかわからないですわ。
モーグリをクルクル回さない!

やっとタイトルが浮かんだんですの?
「サイト1周年に寄せて」ですって?!
寄せてどうするんです、寄せて。自分自身のサイトでしょうに!
いいえ、うるさくなんかないですわ。私の権限でそんなのは却下ですわ。

もっと詩的にこう・・・う〜ん、こんなのどう思われて?
「1年がすぎての感想」。

なんですって。プイ、私の腰にも背の届かない御仁に、子供っぽいとか言われたくないですわ。
でもたしかにそうですわね・・・う〜ん、
「『サイト誕生1周年』を読んで」、これでいかがです?

・・・まあタイトルなんかなんだっていいですわ。

タルタルスツールをここに置いてあげるから、その上に立って、横からご覧になっていて。
私が書くから、気に入らない所だけを直したらいいのですわ。
それじゃあ書きますわよ。

(カリカリ・・・)
(カリカリカリ・・・・・・)

・・・ええい、邪魔ですわ!!
その大きな頭をこっちにグイグイ寄せないでくださる?
遠近法で実際より大きく見えるのかと思ってたら、ホントにヒュムより頭がデカいなんて最近まで知りませんでしたわ。
とにかく、そっちにタルタルデスクがあるから、ぬり絵でもしていて頂戴。

(カリカリ・・・)
(カリカリカリ・・・・・・)

あら、なんだかだんだん楽しくなってきましたわ!
あんがい良いものですのね、文章をものするというのも。フフフ。
う〜ん、ここで現在の政治情勢を述べるというのもいいかも知れないですわね。
我ながら名案ですわ!!

わかってますわよ、サイトの1周年を記念して、感謝と今後の意気込みなどを書きたかったのでしたわね。
ジタバタしないでくださる? プイ、いまさらパニックモーション!
私にはちぃとも可愛くなんか見えませんわ。

だいたいレベル61にもなって、引越し処理ミスで1ヶ月も外に出られないなんて。
なぜ私に相談しなかったのか疑問ですわ。
秘書歴2年弱の私にかかれば、NPCにたったの1回話しかけるだけで、やすやすと引越し完了する自信がありますのよ。
ローバーふうに言えば、「我ここにひとつの疑問を呈するものである」、ですわ!
フフフ。

ところで今回も、いつもみたいに写真をベタベタ貼るんですの、文章の脇に?
まあ、新しい写真はないのですって! 外に出られないっていやなことですわね。

う〜ん、じゃあ、ちょんまげ+おさげの女子っこタルタルのムフフ写真でも貼ったらいかが?
たしか、いくつかHDDに保存してるんですわよね。
エ、そんなのないって? フーン、秘密にするんですの?
・・・だからモーグリのうしろに隠れたって無駄ですわ。
モーグリをクルクル回さない!

・・・まあ写真なんかどうだっていいですわ。

よし、と。
完成ですわ! ヤッターですわ!!
これこれ。どう思われて? 文字もうんと丁寧に書きましたのよ。

あっあっ、なにをするんですの!!
返しなさい! ブロンズベッドの下に潜りこんだって無駄ですのよ!
訂正したい個所があるんですのね。
う〜ん、まあ、私のサイトじゃないのですし・・・どこを直したいんですの。

却下ですわ。

他の場所なら直してあげてもいいですわよ。でもそこは、それが一番いいんですの。
文章のバランスというものを考えたことがあって?
冒頭で秘書の仕事のたいへんさを描写しておくのは効果的ですわ。
他の場所にして頂戴。 で、どこ?

却下ですわ。

ローバー! 悔し紛れにうちのモーグリの尻尾を引っ張らないでくださるかしら!
そしてクルクル回さない!
もうそんなことをするなら、どこも直させてあげませんわ。
だいたい私が書いたんですのよ。
はじめの1行に何時間もかかってた人の意見はみんな却下ですわ。

そろそろ競売に出かける時間ですわね。
まったく秘書は忙しいですわ!
あ、アスピルは今日付けで売ってしまいますわね。外にも出られないんじゃ使えませんものね。
私の書いた名文章は間違いなくサイトにうpして頂けますわね?
頼みましたわよ、じゃあ!

バタン!



ロバ 「ふう・・・なんて奴だ。倉庫キャラの分際で人様の魔法を勝手に売りに行くとは・・・。
モグ 「クポポ〜

ロバ 「だいたいなんなんだ、この紙きれは。字も汚いし。狂ってるんだよ。
モグ 「クポップ?
ロバ 「ん? よし、読んであげるね。いいかい、コレが君のご主人が魂をこめて書いたとかいう文章だよ。

『サイト1年記念♪』 ――by秘書ローウィ

ロバ 「♪かよ! ♪なのかよ!!
モグ 「クプププ

『サイトを作ってから1年がたちました。ぼくがんばったです。でもみんなのおかげですわ。
『秘書のお仕事というものは、1にクリスタルに始まり・・・(以下10行略
『森の区の噴水前を通りますと、誰かの倉庫キャラが釣りをたしなんでいます、(略
『今日はサーカスが来てません。ウィンダスが1位から落ちたことについてアルジドアマルドは・・・(略

ロバ 「はじめの1行以外ぜんぶ単なる秘書日記じゃないかよ!!
モグ 「クポポ。
ロバ 「こんなの誰がうpするかっつ〜の。こうしてこうして・・・グチャグチャポイだ!
モグ 「クププププ!

ガチャ!

秘書 「肝心のアスピルを持っていくのを忘れましたわ!
秘書 「って、あーーーーーーーーー!!!

モグ 「パフックポ〜!!
ロバ 「クペッピポ〜!!




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